自分の家に戻りたいだけなんだ。

でも、今はそれは出来ない。

朝になれば俺が脱走したことがバレてしまうだろう。

いや、もうバレているかもしれない。

だから今、家に戻れば家族に迷惑がかかる。

それだけは絶対出来ない。

男は携帯を出して待ちうけ画面をじっと見た。

「一人にして……」

ごめんな。

携帯の待ち受け画面には一人の微笑む女性。

その女性の腕に抱かれ気持ち良さそうに寝ている我が子が写っていた。

5年も前に撮ったやつだ。

今年で6歳になるはずだ。

「大きくなってるだろうな」

男は目を閉じて我が子を想像した。

逢いたい。

涙が頬をつたって携帯画面に落ちた。

慌てて画面を拭う。

「ははは……大の男が一人で何泣いてんだ」

かっこ悪いじゃねぇか。

拭いても拭いても涙は止まらなかった。

「おめぇ。泣いてんのぉ?」

ッ!?

その声にハッと我に返った。

そいつは、ボロボロの部屋のドアにもたれかかってククッと笑って立っていた。

「な、何故お前がここに居る!?」

男は自分の目を疑った。

今なら奴との距離も近くてはっきりとわかる。

赤髪で顔に大きな刺青が彫ってある。

そう、こんな奴一人しか居ない。

「……グゾル」

グゾルがここに居るはずがないだろ!

だって……だって奴は……!

「殺したはず?ってか?」

「死ぬわけねぇーだろ!てめぇみてぇな奴にぃ……」

俺は殺せねぇぞぉ?

そいつは腹を抱えて笑った。

「おめぇ、俺を撃った後に足すくんで動けなかったもんなぁ!」

そう、かけつけた警備員が発砲した弾が肩に当たりその痛みでやっと動けた。

「人、撃ったことなかったかぁ?あ、おまぇ研究員だもんなぁ!」

研究室に引き篭もってるヒッキー君が人なんて撃ったことないか。

ヒヒッっとそいつは皮肉に笑って見せた。

「グゾル…。何故お前みたいな大物が俺みたいな奴を追いかけてくるんだ!」

「暇、だから?」

暇?。

「最近さぁー。俺の出番が中々廻ってこないんだよなぁ」

「当たり前だ…グゾル。お前が戦場に出たら一夜で一つの街が地図から消える」

「ヒッヒ。スッキリしていいじゃねぇか」

まるで今まで殺ってきた街を思い出すように言った。

「グゾル。お前はイカれている…」

「おいおい。死んでないとはいえ俺を殺そうとしたお前が言えるセリフかぁ?」

「一人殺そうが数千人殺そうが同じ殺しだ。って事か」

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